start end

title

たまには太刀を納めたのもある。 鳥居を潜くぐると杉の梢でいつでも梟ふくろうが鳴いている。

ちび式じい

そうして、冷飯草履ひやめしぞうりの音がぴちゃぴちゃする。

後鬼

それが拝殿の前でやむと、母はまず鈴を鳴らしておいて、すぐにしゃがんで柏手かしわでを打つ。

春日部つむぎ

たいていはこの時梟が急に鳴かなくなる。それから母は一心不乱に夫の無事を祈る。

ずんだもん

母の考えでは、夫が侍であるから、弓矢の神の八幡へ、こうやって是非ない願がんをかけたら、よもや聴かれぬ道理はなかろうと一図に思いつめている。

四国めたん

子供はよくこの鈴の音で眼を覚まして、四辺あたりを見ると真暗だものだから、急に背中で泣き出す事がある。

青山龍星

その時母は口の内で何か祈りながら、背を振ってあやそうとする。すると旨く泣きやむ事もある。

満別花丸

またますます烈しく泣き立てる事もある。いずれにしても母は容易に立たない。

櫻歌ミコ

一通り夫の身の上を祈ってしまうと、今度は細帯を解いて、背中の子を摺りおろすように、背中から前へ廻して、両手に抱きながら拝殿を上って行って、「好い子だから、少しの間ま、待っておいでよ」ときっと自分の頬を子供の頬へ擦りつける。

春日部つむぎ

そうして細帯を長くして、子供を縛っておいて、その片端を拝殿の欄干に括りつける。

No.7

Books

檸檬 NEW

梶井基次郎

夢十夜

夏目漱石

走れメロス

太宰治

雨にも負けず

宮沢賢治

羅生門

芥川竜之介